エゴの役割
 そうするとエゴの目的は、絶え間なく私たちの心理に誘惑を与え、何らかの罪を犯させようとしていることです。多くの人が次のように言います。「神が完全だというならば、何の為にエゴを創ったのだろうか」と。そしてまた「神が本当に人間の幸福を願うならば何故苦しみを与えるのだろうか」と言います。しかしそのような人々は、もしエゴの力がなければ私たちは何かを動かすとか自分自身を動かすということもしない、ということに気づいていません。
 皆さんは、すべての神話や宗教の話などを思い返して下さい。すべてが始まるのは一番最初の誘惑から始まります。すなわち人間の中の欲望が呼び起こされるところから始まります。そしてこの欲望の中でも最も強いものが性的なものです。ですから、すべての罪の一番最初の原罪は性の問題です。そうすると私たち全員がこの地球上に現れて、一番最初に犯した罪はこの性に関するものです。この性の欲望、これがすべての宗教でも原罪だといわれています。
 しかし多くの人は、「私は精神的な進化を遂げるためにはエゴは必要ない」と言います。ということは、自分自身に美しい話をすることを誰でも好むからです。そして私たちが押されることもなく自分で何かをできると信じています。しかし人間の心理はこのようには機能しません。例をいくつかあげてみます。

例1
 古代ギリシアでは賢者たちがその弟子たちと話すために広場に集まりました。そうすると一人の弟子がその賢者に次のような質問をします。
「マスター、この宇宙の中で存在する最も偉大なものは何ですか?」
それで賢者は次のように答えました。
「それは空間です。それは創造されたものすべてをそこに含んでいるからです」と答えました。
次の質問は、「存在するものの中で何が一番美しいものですか?」というものでした。
そして回答は、「愛です。ということは愛なしに何も良いものは存在しないからです」
それから次の質問は「この宇宙の中で何が一番長くもつものですか?」というものでした。
そして回答は次のようなものでした。
「それは希望です。ということは希望は一番最後に死ぬからです」
質問「マスター、この世で最も容易いことは何ですか?」
回答「忠告を与えることです」
ですから多くの人々はいろいろな忠告を与えます。最も容易いことだからです。
質問「マスター、何が最も難しいことですか?」
回答「自分自身を知ることである」
ということは、自分自身を完全に知るものは全ての宇宙を知るからです。
質問「マスター、この世で最も強いものは何ですか?」
回答「必要である」というものでした。
ということは、必要がなければ誰も何もしないからです。
このように必要は大変に強いものです。
次のような例もさしあげましょう。

例2
 第二次世界大戦中、パリの全身不随、半身不随の人たちの病院にナチスの爆弾が落とされました。そうするとこの病院の壁が落ち始めたり、また火の手が上がり始めました。そうするとお医者さんや看護婦さんたちは自分自身を守るために逃げていきました。不随の人たちは病院の中に取り残されました。そして全身不随の人たちは壁が落ちてきても火が近づいてきても何もすることができませんでした。しかし多くの不随の人たちも立ち上がって走って逃げていきました。同じようなことがきっと日本でも起こったでしょう。しかしこの不随の患者たちが、全く必要をもっていない間は病人として、自分の車椅子やベッドに寝たきりでした。ですからその時の爆弾がなければ、そのような人たちは一生不随で終わったでしょう。

 ですから同様に、私たちにエゴがなければ一生幸せに寝転がってテレビを見て、パチンコをして過ごすでしょう。何の為にパチンコがあるのでしょうか。それはエゴの気休めをするためです。ということはエゴは私たちをゆっくりとさせてくれないからです。一人の人が全く冷静に落ち着いてくれば、テレビのスイッチを入れる必要は全くありません。何の為にパチンコに行くかという理由がありません。冷静でいられるからです。ですからパチンコの成功は、この大変催眠的な音と色と動きとそれプラスほうびを与えるということなどによって、私たちが自分自身に直面せずにしばらくの間、気休めができるというところにあります。
 また、自分自身やその家族や社会問題を忘れるために海外旅行に行ったとしても、その間は目新しいものばかりで、自分の問題は思い出さないでしょうけれども、もう一度戻ってくるとまた同じ問題の中にどっぷりつかっていることに気がつくでしょう。すなわち、私たちのサイキスの中のそのエゴの圧力(プレッシャー)に耐えることができません。すなわち、自分自身に直面するということが恐くてならないのです。
 ですから多くの人々は自分で自分を騙して生き続けようと試みます。ですから社会の中でもいろいろな新しいプロジェクトなどが打ち出されます。スペースコロニーやまた新しい商品などが示されます。そうすると多くの人々はそれを拍手でもって迎えるということを好みます。ということは自分の現実に直面するよりも、それらを見ている方がずっと楽だからです。
 日本でも多くの人々がUFOとの交信を好んでいます。ということは、この地球ではもう問題解決は不可能ではないかと思われるほどの核兵器や多くの問題を見て閉じ込められてしまっていると感じています。そうすると自分のまわりではどこにも何の解決が見られないと視線を上に移します。しかし視線を上に上げるのは神を見るためのものです。それは自分自身の中に神が存在することを知らないからです。そうすると上を眺めている人たちは星とUFOを見ます。そして他の惑星の住人たちが全ての問題を解決するということで自分自身を騙します。他の惑星の住人たちはそれなりの役割をもっています。他の惑星の住人たちの多くは、もうエゴを根絶しました。しかし私たちの代わりに彼らが私たちのエゴを絶滅することはできないのです。たとえば子供の代わりに親が学校に行ってあげることができないのと同じです。自分自身で開発をしなければなりません。すなわち、私たちを奴隷化しているこのエゴを自分自身で絶滅することが私たちの解放なのです。

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